課題
農業界におけるマクロ的な課題として、農業従事者の平均年齢67歳に達する高齢化問題、低所得(わずか上位2.4%で農業産出額の6割であり、年の総売上が300万円未満である農家は全体の75%に達している)農業従事者のなり手がいない(離職率は35%と高い水準に達している)、耕作放棄地の増加などたくさんの課題を抱えています。
一方、ミクロ的な課題として、確かな商品・作物が作れない、 病虫害、肥料の過不足、勘と経験に頼り切りである、作物の最適環境がわからないという「不確実性」、売り方を考えず生産だけすればよいという考えや各農家のこだわり(昔からのやり方を変えることができない)、自分の決めた価格で売ることができないという「経営的な視点の欠如」といった問題が横たわっています。
これらの課題を踏まえた上で、私の農園での事例をご紹介します。我が子のように育てた農作物が病害虫や天気で台無しになってしまうリスクは常に存在します。私のハウスはほとんど手動での開閉を行っています。ですので、朝夕は必ずハウスの開け閉めの必要があります。気温が急変すれば、昼間でもハウスを閉めることもあります。このため、外出に制限を受けます。昔、ハウスの開け閉めを失敗して枯らしてしまったこともありました。
当然のことながら、病気や虫が発生し、すいかが枯れてしまうこともあります。台風などの影響を受け、強風が吹けば、ハウスが破れてしまいすいかも枯れてしまうこともあります。このような場合、ハウスだけでなく資材代も吹き飛んでしまいます。ビニル、パイプ合わせて1棟当たり100万円以上の経費が発生します。
さらにJAや市場出荷の場合、自分で値段を付けることができません。品質がよくても、供給量が多ければ納得いく金額で売れないこともあります所謂、豊作貧乏という状態です。そして夏場のハウスの酷暑の中、灼熱地獄の中でのつらい思いをしても報われないことが多くあります。
これらの山積する課題に対して、ICTを活用したスマート農業を活用することで解決策を見出すことができないだろうか?「稼げる農業」が実現できないだろうか・・・新たなチャレンジを開始しました。
チャレンジ
ハウス内の見える化に向けてセンサーを設置し、スイカの最適な環境づくりを実現します。誰もが思わず「美味しい」と笑顔がこぼれるスイカを持続可能な方法で生産していく仕組みを作ります。設備投資に多額な費用が必要ですが、まずはハウス1棟の一区画から小さく始めていきます。
これらの試みは、一般的に「スマート農業」と呼ばれています。「スマートアグリカルチャー(Smart Agriculture)」「スマートアグリ(Smart Agri)」などと称され、日本よりも一歩先に海外では取り組みが始まっています。
スマート農業を導入したいと考える理由として、「農作業の省力化・労力軽減」「農業技術の伝承」「品質の向上」があります。
「農作業の省力化・労力軽減」ですが、前述しましたように農家の高齢化が進み、深刻な労働力不足に陥っています。そんな日本の農業の現場の苦労を、ICTなどを活用して支援していければと考えています。
「農業技術の伝承」も大きな課題です。農業において「経験」は非常に重要なFacterです。一朝一夕で身につけることができるものではありません。私自身、農業の経験値は浅く到底父の50年におよぶノウハウ・経験を取得することは非常に大変であると認識しています。「ノウハウ」「経験」をシステムなどによって見える化し、継続的に継承していける仕組みができれば、新規就農者の参入障壁を下げることができ、人材不足に歯止めがかけれるのではないか?難しいと思いますがチャレンジしていきたいと考えています。
そして「品質の向上」。スマート農業によって栽培履歴を管理し、それらを気候や土壌の環境データと組み合わせることによって、栽培のたびに改善を重ねてきた先人達の知識や経験をシステム化し再現、安定した農作物を栽培できると思っています。
これらの試みは大きな壁がいくつも待ち構えていると思いますが、チャレンジしていきます!